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ケラー&ヘックマン法律事務所
(Keller and Heckman LLP)

所在地 ワシントンD.C.
訪問日 2000年 2月29日(火) 11:00〜13:00
面接者 Mr. Christian C. Semonsen(環境部弁護士)

団体概要

今回、東部地区での通訳を務めて頂いたMr.Christian C. Semonsen(以下クリス)は、ワシントンDCの法律事務所で環境部の弁護士として企業等のコンサルティングをしている。クリスは日本で数年間、環境関連の民間シンクタンクに勤めた経歴があり、日米の環境事情に詳しい。ワシントンでの最初の訪問として、彼の務めるケラー&ヘックマン法律事務所を訪ね、「アメリカ合衆国における環境政策」と題し、その主な特徴と最近の動向について、昼食を挟みながらご講話いただいた。短時間ではあったが、米国のグリーン購入を調査する上で重要な法律面、政治面、社会面の背景が整理された。

ケラー・アンド・ヘックマン法律事務所の主業務は、連邦政府の環境、食品、通信などに関する規制へのコンサルティングである。このコンサルティングとは、主に、法律や規制のできる前の段階から、顧客の要請に応じ政府や関係者と関わり、訴訟にならない様にすることが目的と聞く。(後述するが、米国の場合、法遵守は訴訟によってなされることが多い。)同事務所では、環境部門、食品・薬品部門、通信部門などが中心で、他には宣伝・広告、運輸、貿易、労働安全、健康、雇用など幅広い専門分野に対応し、環境は25年以上の実績がある。クリスは、環境部に所属し、連邦政府の扱う殆どの環境関連法に対応し、法遵守のコンサルティングを担当している。

それでは、「アメリカ合衆国における環境政策〜主な特徴と最近の動向〜」を以下に報告する。

1.アメリカの主な特徴

1−1.強く組織化された環境保護運動

政府は、30年間試行錯誤して、あらゆるビジネスに影響する複雑でしっかりした環境の法規体制を作り上げてきた。同時に、専門的組織の基盤として、環境法、環境アセスメント、EMSなどを高度に扱う法律事務所や、コンサルティング会社が存在している。

特定利益団体の影響は強く、数千の環境NGOやさまざまな業界団体が国、州、地域、国際レベルでの、ロビー活動をしている。メディアは、国民の関心を形成する重要な役割を担っている。

1−2.影響力のある市民団体

特徴として、まず環究[/span>NGOの規模の大きさと対応力の力強さがあげられる。National Wildlife Foundation会員数600万人、グリーンピース200万人などの大組織から急進的な「エコ・テロリスト」と言われる団体まで幅広く存在し、ポリシーも多様である。

次いで、資金力と専門家による影響力があげられる。個人会員や民間財団からの、強力な支援による資金力と、専門的立場から、専門家による調査、戦略、発言などの支援がある。ここでもメディアの活用が有効にされている。

NGOが大きくなった背景に、歴史的理由があり、Sierra Club(1870年代設立) や公民権運動に見られるように長い伝統があり、地域活動や政治参加に関心の強い市民が「自分でやる」という姿勢が伝統的に強い。また、環境に冷たいレーガン・ブッシュ政権時代に、環境対策の後退を懸念する市民からのNGOに対する支持が増え、会員数も大幅に伸びている。

では、なぜ米国は、環境保護団体がとても大きく影響力があるのに、ヨーロッパのように、もっと環境派(環境保護賛成派)になれないのだろうか?まず、米国には、ドイツの緑の党のような、強い「環境政党」(グリーンパーティー)がない。環境保護団体は、特別な問題に対する『連合』は形成しても、政治的な組織化には失敗してきた。また、単一争点の政党に対する関心はほとんど無く、議席がひとつの地区や、2大政党体制が、少数派団体の介入を妨げている。

アメリカ人は、環境派ではあるが、同時にかなり反政府的であり、反税的であり、干渉を嫌う。ヨーロッパの「社会民主主義」をほとんど支持せず、アメリカのビジネス文化は、非常に反政府的である。仕事を提供し、お金を作り出すことだけが、「社会的責任」を果たすことだと信じている。

1970年から80年の多くの環境法は、十分な事前調整なしに官僚によって制定されたため、非現実的なものが多く、解決に年月を要する高いゴールが提示されることとなってしまった。

1−3.開かれた政治体制

米国では、「手続きの権利」がとても重要視されている。法律作成プロセス(問題の設定、政策の立案、決定、施行)のすべての段階で、あらゆる市民に対し参加できる機会を設けている。

1−4.連邦制度

連邦政府の影響力の限界が有り、州に対して強制力を持たない。環境基準を定めるのは、数千人のスタッフを抱える連邦環境保護庁(EPA)だが、大きい割に権限が限られており、実際には各州の規制や法律によるところが大きい。このため、熱心な州とそうでない州との間で格差が大きくなっている。

1−5.強力な法曹界

米国では、裁判も弁護士も身近な存在となっている。環境でも同様で、EPA規制の約8割が行政訴訟の対象にされている。法規の施行の段階で、EPAや民間団体による訴訟が多用される。裁判所は、環境法の作成、解釈、実施に広く拘わり、EPAは、裁判で違反者を起訴する司法省の環境検事に訴訟を任せることで、環境法を実施している。

米国の特徴として、市民訴訟(市民環境訴訟権利)と「民間司法長官制度」(一般市民による司法長官)があり、ほとんどの環境法で規定されて実施されている。これは、政府から見えにくい部分や少数意見の問題に有効である。

2.最近の動向

2−1.大統領と議会の対淀

レーガン・ブッシュ政権時代に、環境派議会(民主党)と、保守的な政府(共和党)の対立が長く続き、議員立法でスーパーファンド法など多くの環境関連法ができたが、政府でなかなか執行されなかった。そして、現クリントン政権時代は、その逆になっている。1995年以降、共和党議会の反対に合って、大きな環境法は殆ど成立していないが、逆に政府EPAが既存の法律を積極的に執行している。EPAは、規制遵守に留まらず、’’Brownfields(スーパーファンド法の代替プログラムとして、修復すれば土地規制を緩和)’’のような、代替的アプローチとしてvoluntary program(任意プログラム)をいろいろ取り入れている。

大統領と議会の対立は、国際的な問題への行き詰まりの原因にもなっている。京都議定書の調印はしたが、議会は批准を拒否したため、実行に移ることが出来ないでいる。(議会が、実行のためにお金を使うことを妨げている。)

モントリオール議定書の条約で廃止対象物質としてあげられているMeBr(メチルブロム;炭化臭素)の段階的廃止は2006年であるが、一方で米国の国内法では2002年という目標がすでに存在していた。しかし議会では、国際基準より厳しい国内法は作らないという法律(”no more stringent than” law )により延期されている。

2−2.連邦環境保護庁(EPA)の規制動向

EPAは「命令と制御」という従来手法に代わる政策として任意規制を模索している。具体的には「内部監査と公開政策」で、違法行為が発覚した場合、企業内部で自発的に任意的に報告すれば、EPAの政策により罰則を減免している。従来は、EPAがその情報を入手した段階で訴訟となり罰則が課せられたが、企業における環境監査を推進するために特典を設けた形となっている。その成果として、米国企業の半数(大企業では90パーセント以上)が内部監査を行い、200以上の企業で98年度の法律違反が公開された。このことより、「訴えない」EPAの政策が、米国内で内部監査を進めた。

2−3.毒性物質「第2の波」

TRI(有害物質排出目録制度−日本のPRTRに相当)に見られる様に、情報公開による環境政策は、間接的な政策(市民やメディアなどの圧力を活用して企業の環境政策に影響を与える政策)としてEPAで力を入れている。

近年、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』以来、毒性物質への関心が高まっており、「第2の波」といえる状況になっている。EPAはSafe Drinking Water Act(飲料水の安全性に関する法)により、昨年より全米の飲料水を提供する自治体と企業に対しそれぞれの飲料水の利用者へ、飲料水の成分や汚染に関する消費者への公開報告「消費者への信頼性レポート(CCRs)」の情報公開を義務化した。このことにより、全米の国民が自分の飲む飲料水の汚染情報が提供者から送られてくるようになった。同様に、食品関連では殺虫剤に関する情報が毎日のように報じられている。1996食品品質保護法(FQPR)は、EPAに、9700の殺虫剤に対する再アセス(再評価)の基準を要求している。

情報公開の例外としては、工場での事故発生時などによる地域への影響として「最悪のシナリオ」報告を公表していたが、テロリストに情報を悪用される危険を回避するために、現在その情報は公開されていない。

EPAは、化学物質の人体影響の情報が充分で無い為、化学メーカー等の企業に対して任意のプログラムとしてHPVチャレンジプログラムを設けた。これは産業側が、自発的に自社の扱う化学物質の人体影響等の情報を提供したり、自主規制を設けるプログラムでる。現在、2000以上の化学物質に関するテストを企業の出資により自発的に行うよう要求し、環境アセスなどの調査が、企業、EPA、EDA(環境NGO)の協力でなされ、その化学的情報が公開されている。ここで、充分な科学的根拠とはどこまでをいうのかについては、米国においても課題となっている。内分泌撹乱物質(環境ホルモン(HAAs)に関して、99年7月に、NRC(国民調査会議)レポートは、影響の可能性を提示したが、人間での調査を薦めている。また、最近の研究により、胎児や子供は、有毒物質に対する曝露によわいことが示されていることから、EPA,FDA,CPSC,環境団体などすべてが、有毒物質の規制の基礎に、子供の健康を引用している。  EPAは、規制の現実的な運用として「プロジェクトXL」を導入した。これは、厳しい規制ではなく、緩やかな規制を要求し、その代わりに産業が法律の内容を受け入れることを奨励するものである。

2−4.持続可能な地域発展

地域開発や土地利用は、伝統的に州政府・自治体が主導してきたが、今後は、地域の政治で「住みやすさ」に関する、重要な役割を果たすという認識が深まっている。これは、ゴア副大統領の提唱する「住みやすさアジェンダ」(”Liveability” Agenda)により、今後の環境問題は過去の「公害」ではなく、「より快適な生活・就業環境」に取り組む姿勢を示している。土地利用問題を連邦のアジェンダの問題とみなし、2000年の予算案において「住みやすさ」のための予Z10億ドルを提案した。地域社会と生活の質への注目は、より広い観衆に対して政治的なアピール力はある。EPAは地域政策を進めるための情報センターとして、「地域政府環境支援センター」(ホームページ:www.lgean.org)を開設した。

最近では市民の間に「反スプロール運動(”Anti-Sprawl” movement)」が起きている。アメリカのスプロール現象(都市が不規則に広がっていくこと)や、車依存社会に対してなにか行動すべきときであるという認識が深まっており、アメリカ人の考え方が少しずつ変わっていることの現れかもしれない。

オープンスペースの確保。1998年から1999年にかけて、数百の州及び地域の投票で、オープンスペースを確保することが決議された。その結果、行政がオープンスペースとなりうる土地を買占め確保している。

2−5.グリーン・コンシューマリズムの新たなる発展

グリーン・コンシューマリズムの最近の発展として、グリーン・インベスティング(環境投資)、グリーンエネルギー、環境ラベルの3つが挙げられる。

2−5−1.グリーンインベスティング(環境投資)

アメリカの投資家は、「社会的責任投資(SRI)」を通して、資金供給側のビジネスに影響を与えている。アメリカには「社会的責任を果たしている」会社からだけ株を買っている投資信託が数多くある(スミス・バーニー社 のレポートを参照)。企業選別の基準は多様であるが、一般的に含まれるのは、環境に対する責任を表明していることや進行中の監査プログラム、適切な環境マネジメントシステムがあり、環境ビジネス活動を約束していることなど。他には、本来の伝統的SRIとして、宗教的な目的などから酒、タバコ産業との関係持たないことや武器産業との関係持たないこと、動物実験を行わないこと、その他の社会的要素として、人種や性による差別待遇をしていないこと、などである。大きいところでは、独立したSRI組織である、グリーン投資信託の「パルナッソス」や、環境NGOの「環境資本ネットワーク(ECN)」、グリーンカンパニーに関する情報を投資家に提供し、それらの会社に資金調達を援助する「社会投資フォーラム(SIF)」があり、これらがSRIを促進している。結果として、今日では、SRIファンドに2兆ドル以上投資され、投資信託の14%を占める。

2−5−2.グリーンエネルギー

連邦の法律では、エネルギー卸売市場の自由化の規制緩和をし、生産者が公開市場でエネルギーを売ることを許可した。その結果、今や多くのアメリカ人がエネルギー供給会社を選び、自分の好きなエネルギーを自由に選択することが出来る。州は、現在小売段階の規制緩和に動いている。最初に実施されたのはカリフォルニアで、1998年である。少なくとも17のその他の州も現在懸案中である。カリフォルニアでは、再生可能エネルギーの市場占有率が、11%から30%以上にまで増加したと推算している。特筆すべき傾向として、カリフォルニアで電気供給会社を変更した人の半数以上が、再生可能エネルギーを選んでいる。これには、家庭だけでなく、地方政府や企業でも導入している。一方で、依然として高コストが問題となっていることに変わりはない。

2−5−3.環境ラベル

アメリカで見られる環境ラベルには、次のようなものがあるが、日本のエコマークのように認知度の高い総合的な第3者認証ラベルは存在しない。

  • 民間組織のラベル:Green Seal、Green-E 等
  • 州のラベル:カリフォルニア州のオーガニック認証ラベル
  • 連邦政府のラベル:エナジースター(EPAとエネルギー省)  
    ※EPAでは、『まずラベルを見よう!』キャンペーンを2000年春に計画。
  • その他:Energy Guide(家電製品のエネルギー消費と電気代情報を提供)
2−6.グリーン調達・購入

アメリカ連邦政府は、製品とサービスに年間2000億ドルを費やす全米最大の購入組織である。1993年に出された大統領指令12873号「調達、リサイクル及び廃棄物抑制」では、連邦政府が購入する製品やサービスの環境負荷を最少にすることをうたっている。1998年の大統領令13101号「廃棄物回避、リサイクル、連邦調達を通じた政府のグリーン化」では、全ての連邦政府におけるグリーン調達の枠組みを定めており、EPAと他の省庁に購入基準と推奨製品リストを作成する権限を与えている。

2−6−1.環境保護庁(EPA)のEPPプログラム

−EPP(Environmentally Preferable Purchasing)
−1999年8月20日、EPAは、「グリーン購入に関する最終ガイダンス」を発行した。
これは次の5つの原則から成るものである。

  • 原則1:環境配慮は、価格や性能と並ぶ通常の購入要素の一部である
  • 原則2:汚染予防の考えに立って、購入の初期段階で環境配慮がなされるべきである
  • 原則3:ライフサイクルの視点から、多様な側面を考慮すべきである
  • 原則4:複数の環境影響を比較検討すること
  • 原則5:購入判断にあたっては包括的で適切な情報が必要である
−問題点:
  • 産業や議員の一部は、EPPのアプローチはコストがかかりすぎると見ている。
  • 複数の環境影響について、どちらかを重視すべきかをどうやって決めるのか
−パイロット・プロジェクト:
  • 8つの連邦政府機関がEPPとパイロットプロジェクトを行っている。
−<プロジェクト例>:
  • 国防省:研究開発のための12,000人が働く施設で、ペンキなどの購入ガイドラインをつくるために、エコラベル機関グリーンシールと共同で作業をしている。その結果、高濃度VOCペンキを排除でき,コストも節約することができた。
  • レーガンビルのEPA新本部庁舎
  • マサチューセッツ州のEPPプログラム
  • サンタモニカ市は包括的なEPPプログラムを持ち、グリーン電力を購入するポリシーも持っている。
2−6−2.リサイクル品の包括的調達ガイドライン(CPG)

−背景:資源保全再生法(RCRA:Resource Conservation and Recovery)は、EPAに対して政府機関が購入すべきリサイクル品をリストアップするように求めた。

−2000年1月、EPAは、「再生原料を含む製品の購入に関する包括的調達ガイドライン(CPG=Comprehensive Procurement Guideline)」を発行した。

−ガイドラインでは、54製品分野が対象となっている。

−ガイドラインは、連邦政府、州政府、自治体、政府契約業者が1万ドル以上の購入をするときに適用される。

2−6−3.農務省の「バイオベース製品」プロジェクト

−1999年8月13日、農務省は「バイオベース製品」に関する提案を発表した。

−目的:再生可能な農業生産物からできた製品の購入を促進すること   例:とうもろこしからできた繊維、大豆インク 等

−提案された判断基準

  • 生物起源原料で出来ていること
  • 商業的に入手可能であること
  • リーズナブルな価格であること
  • 連邦の品質基準に合致していること
  • EPAのEPPガイドラインに合致していること

【報告者:森 雅浩(ハチオウ)】

視察先

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