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サンタモニカ市

所在地 カリフォルニア州サンタモニカ市
訪問日 2000年 3月 2日(木) 10:00〜15:00
面接者 Mr. Brian Johnson(環境部プログラム部)、
Mr. Dean Kubani(環境プログラム部)、
Mr. Craig Perkins(環境・公共業務管理部)

団体概要

↓サンタモニカ桟橋
サンタモニカ桟橋
サンタモニカ市は、アメリカ西海岸カリフォルニア州、ロサンゼルスから西へ約25㎞に位置し、美しいビーチと公園、ホテルやショッピング街が連なる人口9万人の観光都市である。サンタモニカ市では、1992年に環境審議会において起案された後、1994年に市議会で採択された「持続可能な都市プログラム(Sustainable City Program)」に基づいた環境政策が積極的に展開されている。今回、我々は、市庁舎内ではなく夏には沢山の市民やツーリストが集まるサンタモニカ・ピア(桟橋)の一角に位置する、洒落た建物の2階に事務所を置く、サンタモニカ市環境部を訪問した。
(市環境部のホームページ:www.ci.santa-monica.ca.us/environment/

↓サンタモニカ市環境部の事務所入口 / サンタモニカ市環境部の事務所がある建物(近景)↓
サンタモニカ市環境部

「持続可能な都市プログラム」は、「資源の保全」、「交通」、「汚染防止と公衆衛生」、「コミュニティと地域経済の発展」の4つの領域を柱として、18のサステナビリティ指標を設定しているところが注目される。2000年をゴールとする数値目標を定めると共に、どのような道筋でその目標に到達するのかを示すものである。本報告では、「持続可能な都市プログラム」とその一環として取り組まれ大きな成果を上げつつある、「グリーン購入」、「総合的害虫管理プログラム」、「グリーン・ビルディング・ガイドライン」などについて紹介する。

  1. サステナビリティ指標(Sustainability indicators)
  2. 「持続可能な都市プログラム」の実施状況(Sustainable City Progress Report, December 1996)
  3. 「持続可能な都市プログラム」の新たな展開(Sustainable City Progress Report Update, October 1999)
  4. 個別プログラムの実施状況:交通
  5. グリーン購入(Green Purchasing)
  6. 毒物使用削減プログラム(Toxic Use Reduction Program)
  7. グリーン・ビルディングの設計と建設の指針(Green Building Design & Construction Guidelines)

1.サステナビリティ指標(Sustainability indicators)

持続可能なコミュニティの実現に向けた取り組みの進捗状況を評価するための指標として、環境審議会と関連スタッフによって開発されたものがサステナビリティ指標である。現在、下記の3つ基準を満たすことを前提として、18の指標が設定されている。

  • 長期的な地域経済、並びに、コミュニティの環境度や健康度を基本的に反映するものである
  • 統計的/数値的に測定可能なものである(既存のデータとして利用可能、或いは、データ収集の実際的方法を今後確立できる)
  • コミュニティや自治体のアクションによって影響をうける実態や状況を反映するものである

18のサステナビリティ指標

↓ サンタモニカ桟橋にあるCNG(圧搾天然ガス)
スタンドサンタモニカ桟橋にあるCNG(圧搾天然ガス)スタンド

サンタモニカ桟橋にあるCNG(圧搾天然ガス)スタンド

  1. 1)固形廃棄物の埋め立て処分量(トン/年)
  2. 2)水使用量(ガロン/日)
  3. 3)エネルギー使用量:電気と天然ガス(自動車用を除く)
  4. 4)再生紙/非木材紙の使用割合(%):公共施設のみ
■輸送/交通
  1. 5)市営バスの利用者数(人/年)
  2. 6)自家用車平均乗車人数(人/台):従業員数50人以上の事業所
  3. 7)低公害車導入率(%):市所有の車両
■汚染防止と公衆衛生
  1. 8)有害廃棄物排出量:公共事業のみ
  2. 9)有害物質の購入量:公共施設のみ
  3. 10)浄化作業が必要な地下貯蔵タンク数
  4. 11)連邦政府の基準の満たす地下貯蔵タンクの割合(%)
  5. 12)乾期(3?11月)における雨水の利用/処理
  6. 13)汚水排出量(ガロン/日)
■コミュニティと経済の発展
  1. 14)学校におけるサステナブル・プログラムの開発と実施
  2. 15)低所得世帯向け住宅数
  3. 16)公共のオープンスペース(エイカー)
  4. 17)コミュニティ・ガーデンの数
  5. 18)公共のスペースに植えられている木の本数

18のサステナビリティ指標は、持続可能な社会の実現に向けたすべての課題をカバーするものではないが、プログラム評価の出発点として重要である。現在、市のスタッフは、これらの指標の見直し作業を行っている。また、2010年に向けての新しい指標の開発にも取り組む予定である。

2.「持続可能な都市プログラム」の実施状況(Sustainable City Progress Report, December 1996)

2-1.1996年のプログレスレポートで確認された障害
  1. 1)1994年以降、目標達成に向けた様々な取り組みが展開されているにもかかわらず、持続可能な社会に向けた政策やプログラムの多くは、有機的な関連づけが行われておらず、行政における各部門間の連携も不十分である。スタッフの多くはプログラムのことをいまだよく認知していない。また、認知されていたとしても、プログラムの実行に高い優先順位が与えられていない。これまで、「持続可能な都市プログラム」の目標を市の基本計画や、市民サービスのための様々なプランと関連づけ一体化するための努力がほとんどなされていない。その理由としては、プログラムの実施がシステマティックに行われていないこと、プログラムに関わる個々のスタッフの責任が明確にされていないこと、プログラムの円滑な実施に必要な予算やマンパワーが整備されていないことなどが上げられる。
  2. 2)今日まで、産業界、学校、サンタモニカ大学、地元のNGOや住民をこのプログラムに巻き込むための努力が不十分であった。その結果、このプログラムについての、コミュニティでの認知は低く、理解も十分ではない。
2-2.指標別の状況

■改善が顕著な指標
水使用量、固形廃棄物埋立処分量、低公害車、汚水排出量、自家用車平均乗車人数、雨水の処理/利用、Deed-Restricted Affordable Housing Units、オープン・スペース

■改善が認められない指標
エネルギー使用、市営バス利用者数、コミュニティ・ガーデン、持続可能な学校プログラム

■適切な評価が実施できなかった指標
再生紙利用、公共スペースの樹木数、有害物質の購入量、要浄化地下貯蔵タンク数

3.「持続可能な都市プログラム」の新たな展開(Sustainable City Progress Report Update, October 1999)

1996年にプログレス・レポートが公表されて以来2年半の間、下記の3点に焦点を絞った取り組みがなされた結果、プログラムの顕著な進展が確認されている。

  • 市職員、住民、企業人におけるプログラムの認知とプログラムへの参加を高める
  • 持続可能な都市プログラムの目標を市の基本計画と一致させょ
  • プログラムの幅広い推進のために、地域の各組織や機関との協力関係の構築
3-1.スタッフの意識向上

■パフォーマンス評価指針の策定
持続可能な都市プログラムに対する市職員の意識向上を図るため、各部局におけるすべての作業分類をカバーする持続可能都市パフォーマンス評価指針が作成された。この指針は、持続可能な都市プログラムの目標を達成するために、一人一人の職員が出来ることを具体的に示すものである。

■グリーン購入グループの発足
1999年5月には、環境プログラム部門のスタッフは、環境に配慮した製品の入手可能性、有効性、有益性についての意識を高め、それらの製品購入を促進するために、市のすべての部局スタッフから構成される隔月の会議をスタートさせた。

3-2.プログラムコーディネーターの任命

1999年7月に、持続可能な都市プログラムのコーディネーターのポジションが環境プログラム部門に新設された。コーディネーターの任務は、プログラムの実施と評価の過程をを継続的に監視することと、市の全ての部局間の調整をすることにある。1996年のプログレス・レポートで指摘された障害の多くを解消する上で大事な役割を果たしている。

3-3.コミュニケーション・プランの策定

持続可能性についてのコミュニティにおける認知と理解を向上させることを目的としてコミュニケーション・プランが策定された。1999年9月に完了予定のこのプランは、ターゲットとする集団、キー・メッセージ、キャンペーン・ロゴ、短期/中期的な支援のゴール、並びに、最終目標を達成するための詳細な戦略と方策などについての内容を含んでいる。

3-4.コミュニティへの働きかけと協同
1)持続可能なビジネス関するワークショップの開催
現在、市のスタッフは、持続可能なビジネス関するワークショップを開催するため、商工会議所との協同作業を進めている。「持続可能なビジネス」、「エネルギー効率と再生可能エネルギー」、「グリーン・ビルディングの概念」をテーマにした3つのワークショップの開催が予定されている。
2)グリーン・チーム・プログラムの開発
持続可能な都市プログラムの目標達成に向けて、市民の意識を向上し参加を促進することを目的として、グリーン・チーム・プログラムが開発された。グリーン・チームは6~8人で構成され、環境へのインパクトを小さくする方法や各家庭における行動で経費を削減する方法について、3ヶ月間定期的に顔を合わせ、話し合いを持つ場である。1999年1月にスタートし、1999年末までに25~40のチームが作られた。このパイロット・プログラムは、持続可能な都市プログラムの目標達成に有効で、将来更に拡大されると思われる。
3)サンタモニカ大学環境教育センター
1998年、サンタモニカ大学当局は、キャンパス内の既存の建物を環境教育センターとすることを決定した。このセンターは現在、グリーン・チーム・プログラムのスタッフが使用しており、将来は、学生、住民、民間事業者のための環境情報の提供場所として機能するであろう。

4.個別プログラムの実施状況:「交通」

1999年に発行されたプログレス・レポートでは、「固形廃棄物とリサイクリング」、「水」、「エネルギー」、「購入」、「建設と開発」、「交通」、「有害物質」、「雨水/汚水」、「教育」、「住居」、「コミュニティと経済」の8つの政策領域において、到達目標にむけた取り組み状況、プログラムと政策の改善、取り組みの障害、今後の方向性という観点から、詳細な検証がなされている。ここでは、「交通」に関するサステナビリティ指標の推移について、具体的な動きを紹介する。

4-1.採用された指標と目標
  • ■サンタモニカ市営バス(Big Blue Bus)の乗客数を、1990年をベースラインとして、2000年までに10%増加させる。
  • ■従業員50人以上の事業所における自家用車平均乗車人数(Average Vehicle Ridership:AVR)を、2000年までに1.5とする。
  • ■2000年までに、市が保有する車両の75%を低公害(Reduced emission fuels:REFs)車に転換する。
4-2.目標達成に向けた取り組み
1)ビッグ・ブルー・バスの乗客数
1990年の乗客数は1900万人で、目標とする10%増は、2090万人に相当する。乗客数は、1990年から1994年にかけて7.2%減少しているが、これは、主として不況の影響を受けたものと考えられている。1994年以降、乗客数は顕著に増加し、1998年には1990年に較べ9.5%の増加を示した。この増加は、地域経済の回復と交通局のサービス向上プランの実施によるものと思われる。サービス向上の大部分は、1997年以降に実施されており、1997年から98年にかけての乗客数の大きな増加はこれによるものである。交通局のスタッフは、今後予定されているサービス向上とインフラ整備により、乗客数は続けて増加し、10%増加という目標は2000年までに達成されると予測している。
サンタモニカ市の・ビッグ・ブルー・バスは、全米一のトランジットシステムとして高く評価され、様々な賞を受けている。サービス向上プログラムの策定にあたっては、運行ルート別の営業実績解析、乗務員からの聞き取り、フォーカスグループ調査、乗客やサービスエリアの住民からの意見聴取など様々な調査を行っている。
2)50人以上の企業における自家用車平均乗車人数(Average Vehicle Ridership:AVR)
AVRは、調査された自家用車1台当たりに乗車している人数の平均値である。AVRの増大は、交通渋滞の解消と自動車排ガスの削減につながる。表に示されたAVRの数字は、市交通管理事務所が、市交通管理計画条例に基づき、従業員50人以上の企業について調査した情報に基づくものである。AVRを2000年までに1.5にするという目標は、この条例に示されている数値である(ちなみに、南カリフォルニア地域のAVRは現在1.27である)。市交通管理事務所では、AVRは引き続き上昇し、2000年までには、目標値1.5を達成するであろうと考えている。
一方、職員数100人以上の市の施設に勤務する職員におけるAVRは、1990年の1.16から、1998年には1.84へと大きく上昇している。
4-3.市が所有する車両

「持続可能な都市プログラム」の指標は、2000年までに市が所有する車両の75%を低公害車に切り替えることである。低公害車には、圧縮液化天然ガス(CNG)車、液化天然ガス(LNG)車、プロパン車、電気自動車など、ガソリンやディーゼルに較べ大気汚染物質の排出量が少ない車両すべてが含まれる。市の車両管理部門が維持管理する車両には、市役所職員や維持管理職員によって使用される車に加えて、警察のバイクや駐車監視のスクーターなども含まれる。現在、580台の車両が登録されている。

↓ サンタモニカ桟橋にある電気自動車用の充電スタンド
↓ サンタモニカ桟橋にある電気自動車用の充電スタンド
サンタモニカ桟橋にある電気自動車用の充電スタンド 市が所有する車両に占める低公害車の割合は、1993年から1998年にかけて、10%から33%に増加した。1999年6月の時点では34%、580台の内199台が低公害車である。内訳は、CNGヤ130台、プロパン車43台、電気自動車26台である。

2000年の12月までに、更に100台の低公害車が導入される予定で、低公害車の割合は52%まで上昇するが、目標の75%を達成するを困難にするいくつかの障害も、車両管理部門のスタッフによって指摘されている。警察の白バイや工事用車両など代替の低公害車が存在しないことや、発注後の納期が、1年から1年半、或いは、それ以上と長いことなどが障害として指摘されている。

5.グリーン購入(Green Purchasing)

サンタモニカ市は、アメリカの環境保護局(EPA)が推進しているグリーン購入プログラム(Environmentally Preferable Purchasing:EPP)のリーダー的存在として注目されている。サンタモニカ市の取り組みは、一つの地方自治体が、購入に関する基本的方針を、ユーザーと環境の両方にプラスになるように、短期間のうちに変えうることを示す良いモデルである。

たとえば、各部門で使われる洗浄剤の多くを低/無毒性のものに切り替え、保守管理に関する年間経費の5%削減や、殺虫剤に依存しない総合的害虫管理プログラムの導入による30%の経費削減を達成している。また、オフィス用紙、再生塗料など多くの再生品の購入にも積極的に取り組んでいる。市が所有する車両の67.5%が再精製モーターオイルとプロピレングリコールの不凍液(エチレングリコールに較べ低毒性)を、34%の車両が、圧縮液化天然ガス(CNG)やプロパン、電気など、環境負荷の少ない代替燃料を使用している。

5-1.グリーン購入とは

「グリーン購入」という用語の「グリーン」は、「環境に、より好ましい(Environmentally preferable)」ということを意味している。再生品の購入に限らず、少しでも有害性や毒性が低い、資源効率性が高い、汚染が少ない、などの視点が含まれている。「持続可能な都市プログラム」の重要なひとつの領域として、1991年にスタートしたサンタモニカ市のグリーン購入の取り組みがめざすゴールは、資源消費の削減、廃棄物と汚染物質の削減、並びに、健康と環境保護である。

5-2.グリーン購入の取り組みが成功した領域
  • -市で使用される保守管理用の薬剤:カーペットクリーナー、多目的クリーナー、漂白剤
  • -車の維持管理用製品:不凍液、モーターオイル、再生タイヤ
  • -再生品:紙、オフィス用品、モーターオイル、道路の表面材、塗料、
  • -自動車用代替燃料:天然ガス、電気、CNG、LNG
  • -害虫駆除サービス
  • -省エネ/節水機器
  • -再生可能エネルギー:地熱利用
5-3.グリーン購入の戦略
■条例で定めるもの
熱帯材やオゾン層破壊化学物質の使用制限
■市議会で採択された政策/方針
自動車の代替燃料プログラム、再生可能エネルギー
■行政上の指針(率先的行動)
5-4.グリーン購入の実施方法
■製品の選択に当たっての柔軟な対応
-ひとつの製品にひとつの基準 : 例えば、用紙
-複数の基準、複数の製品、入札制度 : 例えば、洗浄込コ
■既存の購入プロセスのもとで、環境部と仕入れ係、管理職、ユーザーとの共同作業
-研究の実施
-製品のテスト
-仕様書の作成
-ユーザーの教育、訓練
5-5.グリーン購入の障害
■入札制度の変革
従来は価格と性能のみを考えた入札だったが(Low bid)、1994年以降は、環境特性/性能/価格の3要素にもとづく入札制度(Lowest responsible bid)に転換した。ある製品の価格が安いかどうかは、仕入れ値だけで決まるものではない。廃棄の際にかかるコストも考慮する必要がある。環境によいものはコストが高い、製品が少ない、取扱業者が少ないという先入観の払拭が重要である。
■変化への抵抗
グリーン購入にあたっては職員から変化への抵抗があったが、環境+コスト+健康の観点から、環境へのベネフィットとコスト削減効果の両方についてユーザー教育を実施して解決していった。
■製品の性能
当初、製品の中には品質に問題があるものもあった。そこで、従来の製品と性能面で違いがないことを示すため、研究研究と試験を実施した(再生オイル)。環境に良くても、性能が悪いと判断した時には採用しない。
5-6.成功の鍵
  1. トップからのサポート
    市議会、市長、各部局長など、自治体の上層部からのサポートを得られたことが決定的に重要である。
  2. 意志決定のプロセスへのエンドユーザーの参加
    代替製品の選択のプロセスにエンドユーザーが関与することで、既存の購買行動を変えることに対する抵抗が小さくなる。特定の商品やサービスについてのエンドユーザーの知識や経験が、最も効果的な代替製品の選択に役立つと同時に、彼らはグリーン購入の信頼しうる提唱者となる。
  3. 先行調査の実施
    サンタモニカ市が実施したニーズ調査、並びに、代替製品とサービスに関するベースライン調査は、仕様書の原案の作成や入札の評価に役立った。このような理由から、コンサルタント、非営利団体、大学、製造メーカー、他の自治体や市のスタッフなど様々なところに意見と助言を求めた。
  4. 購入に関する既存のシステムの活用
    製品やサービスの分野によって購入方法は異なる。そこで、環境に配慮した個々の製品やサービスの購入に当たっては、既存の購入方法を活かしてグリーン購入の目標を達成できるようなアプローチを心がけた。
  5. 環境部門と購入部門のパートナーシップの形成
    環境部門のスタッフは製品に関する調査を実施し、購入部門のスタッフが製品を調達する時に使える仕様書を立案した。また、購入部門のスタッフは、化学物質を含む製品への要望についての質問については、環境部門のスタッフとコンタクトをとった。このチームワークアプローチは、購入担当者の仕事負荷を増やすことなくグリーン購入の目標を達成するのに役立つ。
  6. パイロットプログラムの実施
    サンタモニカ市では、限られた範囲で代替製品をテスト使用するパイロットプログラムを実施した。これによって、製品の性能を事前に確認することができるだけでなく、意志決定プロセスにおけるエンドユーザーの参加を可能にし、代替製品に関するユーザーの懸念を解消することに役立っている。
  7. 専門家による実地トレーニングの実施
    信頼できる専門家による、エンドユーザーに対するトレーニングは重要なステップである。代替の洗浄剤をどのようにして使うか、また、どのようにして害虫の駆除を行うかについて、それぞれ専門家を招いてのトレーニングを行った。実地の説明はとりわけ効果的で、代替製品が従来の製品と同等もしくは優れていることをエンドユーザーに確信させるものである。
  8. 納品業者とのミーティングの開催
    納入業者とのフェイス・ツー・フェイスのミーティングを開いて、納入業者の質問に環境部門のスタッフが答え、完全で正確な情報の必要性を強調することは、入札を改善することにつながる。
  9. 柔軟性の維持
    グリーン購入プログラムは絶えず進展し、プログラムの実施によって得られた教訓が取り込まれている。たとえば、洗浄剤についての仕様書は当初の入札プロセスにおける経験をもとに実質的に改訂されている。
  10. プログラムの評価と将来計画
    環境部門のスタッフと購入部門のスタッフは、改善に向けてプログラムの成功度合いと製品を継続的に評価している。

6.毒物使用削減プログラム(Toxic Use Reduction Program:TUR)

サンタモニカ市において実践されているグリーン購入プロジェクトの中で注目されるのが、公共施設/道路の保守管理に使用される化学薬品プログラム(Custodial Products Program)と、総合的害虫管理プログラム(Integrated Pest Management Program:IPM)を柱として推進されている毒物使用削減プログラムである。オフィス用品や電気製品を中心に展開されてきた、わが国におけるグリーン購入の取り組みと若干異なる側面を持っていると言える。

6-1.公共施設/道路の保守管理に使用される化学薬品プログラム

これまで使用されてきた製品(化学薬品)は、それを使って仕事をする労働者の健康、施設を訪問/利用する市民の健康、そして、環境(コミュニティの健康)に有害なものが多く、発ガン性物質も含まれていたことから、有害化学物質を含む製品の使用を削減あるいは禁止することがこのプログラムの目的である。

6-2.化学薬品プログラムのプロセス

市議会、ユーザー、納入業者など利害関係者が多く、プログラムの実施には多くの困難を伴ったが、6年前にスタートしたベースライン評価に始まり、パイロット・プロジェクトの実施、基準作成、入札方法の検討、現状の再評価という過程を経て現在に至っている。

↓ 公共施設の保守管理担当の車両
(化学薬品プログラム)
公共施設の保守管理担当の車両(化学薬品プログラム)
公共施設の保守管理担当の車両(化学薬品プログラム) 第一段階は、現在使っている化学薬品をより好ましいもの(毒性の低いもの)に切り替えることから始まった。市の全部局に最初から一気に広めるのではなく、部分的に試行し、そこでよい反応を得ることができた場合に、市としての標準(基準)が設定された。この基準設定に当たっては、市独自の様々な調査が行われた。化学薬品の製造メーカーからは、当初、反対の声もあがったが、「子供たちや市民が利用する公共の建物において、彼らを有害物質にさらしてはならない」という我々の立場は明確であった。「有害性」、「生分解性」、「容器のリサイクル可能性」を基準設定の物差しとした。

↓ 保守管理用の化学薬品を保管する地下の倉庫
保守管理用の化学薬品を保管する地下の倉庫
保守管理用の化学薬品を保管する地下の倉庫 このプログラムの実施によって、市庁舎で使用する化学薬品を49種類から17種類に削減することができた。石油系の洗浄剤の多くは、テルペンなど柑橘類系のものに切り替えられた。これらは、無害ではないが生分解性が高いことが切り替えの理由である。メーカーの協力もあって、現在、様々な用途で使われている。メタルクリーナーについては適当な代替品が見つかっていない。切り替えによって5%程度の経費削減を実現した。また、入札制度の見直しも2年間かけて行われた。

6-3.総合的害虫管理プログラム(Integrated Pest Management Program:IPM)

従来の害虫管理(駆除)サービスは、住民の健康や生活環境を脅かしかねない化学薬品や手法に頼って行われてきたことに対する反省から生まれたプログラムである。

基本理念は、人間よりも長い歴史を持っている「害虫」との共生である。「害虫」を見つければ、殺虫剤のスプレーを使って殺すという手法ではなく、アリやゴキブリなどいわゆる「害虫」と呼ばれる生物の繁殖方法、生息数、行動様式は、ニーズなどを把握し、それに上手に介入することで共存の道を探ることが重要と考えられた。

取り組みのプロセスは、IPMの基本理念の確立、害虫管理者の養成を含む組織体制の整備、薬品購入基準の作成、スタッフのトレーニングとコミュニケーション、モニタリングと評価、現状把握という形で進められた。とりわけ、スタッフの教育やモニタリングが重要である。このプログラムでは、自分の健康を守りたいという市役所のスタッフが主要な推進者になった。

4年間の取り組みの結果、30%コスト削減を達成すると共に、害虫に関する各部署からの苦情を90%減らすことができた。これで、IPMの効果は、殺虫剤のように一時的なものではなく長期にわたることが確認された。

7.グリーン・ビルディングの設計と建設の指針(Green Building Design & Construction Guidelines)

7-1.グリーンなビルディングとは

これまでの建築デザインは、経済性、実用性、耐久性、美観などを基本要件としてきたのに対し、設計、建築、運用のプロセス全体において、住まい手の健康と満足感の向上、並びに、環境影響と維持管理コストの削減に最大限配慮しようとするのがグリーンな建築デザインである。

7-2.グリーンビルディングの必要条件
  1. エネルギー効率
    2000年7月から発効する新しい条例では、エネルギー効率と費用効果の高さが新築の要件になる。ホテル、事務所、店舗、アパート(3世帯以上)などの新築では、20~25%のエネルギー効率(省エネ)の向上が要求される。ここでの費用効果とは、省エネ設計による建築コストの上昇を3%以内に抑え、それを5年以内にペイバックできること定義されている。また、給湯パイプを断熱材で覆い熱損失を小さく抑えることや、温水プールでは太陽熱の利用も義務づけられている。
  2. 建築素材
    建築廃材の分別・リサイクルについても規定があり、古いビルを壊して新しいビルをつくる時には、その75%を再利用しなければならない。また、断熱材、アルミ及び鉄製品、タイル、カーペットなどの主要な建材の使用については、再生材について定めた連邦環境保護局(EPA)の購入ガイドラインに従うことも必要となる。
  3. 再生可能エネルギー
    ↓ 市民ホール横の太陽光パネル
    ↓ 市民ホール横の太陽光パネル
    市民ホール横の太陽光パネル 1999年7月1日以降、グリーンエネルギー購入指針に基づき、サンタモニカ市の全ての公共施設で使用されるエネルギーとして、電力会社から購入される電力は、100%再生可能エネルギー(主に地熱発電)へと切り替えられている。また、サンタモニカ桟橋や市民ホールなど市内の各所に太陽光パネルが設置され、その電力は、暖房や電気自動車、遊園地の観覧車などの用途に活用されている。 サンタモニカ市では、現在、従来比35%省エネの新庁舎(警察署と消防署が入居)を建設中であり、この基準は、今後建設される公共建築物や市営住宅にも適用されることになっている。今後、長期的には風力発電など新たな再生可能エネルギーの開発に努めていく。

【報告者:宮北隆志(熊本大学)】

視察先

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