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ソロモン・スミス・バーニィ社(SSB)

所在地 ニューヨーク
訪問日 2000年 2月28日(月) 11:00〜12:30
面接者 アセット・マネジメント部門 
Ms. Mary Jane C. McQuillen (Assistant Vice President) 
Ms. Linda Descano(Director)

会社概要

シティグル−プ傘下のSSB(Salomon Smith Barney Inc.)は投資会社であり、一般の投資だけでなく社会的責任投資(SRI:Social Responsible Investment)も扱っている。SRIとしてはミューチュアル・ファンド(*)、個人のポートフォリオ作成などがあり、投資額w[/span>19億ドルである。SRI以外では投資銀行・企業・政府相手の投資業務、個人投資家の商品と相談、投資する会社情報の調査・評価を行っている。

*ミューチュアル・ファンドとは、小口の資金を集めて大口化し、専門家により運用する分散型の投資信託。日本の投資信託が契約型であるのに対し、会社型であり株主総会がある。このうちSRIの基準によるファンドをモラル・ファンドという。

1.社会的責任投資(SRI)とは

SRIには幅広い意味があるが、 もともと宗教団体、宗教人がその価値観に合った投資をしたいということからスタートした。主にタバコ産業、アルコール産業、ギャンブル産業を対象から排除して投資することが伝統的にSRIといわれてきた。だんだん幅が広くなり、ヴェトナム戦争の頃には戦争に反対する投資者から兵器産業に投資したくない、80年代に入ってから南アフリカのアパルトヘイト問題から南アフリカで経済活動したり、関係している企業には投資しないという動きが出てきた。現在ではもっと幅広く環境対策などを含めた企業の社会的責任を考慮した投資活動として広まっている。

↓ SSB「社会的責任投資のパンフレット」
SOCIAL INVESTING
このように投資する人々の価値観や投資基準が多様であることがSRIの特徴でもある。いまだに伝統的なタバコやアルコールなどを罪の株(Sin Stock)と考える投資者もいるし、人権問題や環境問題を重視する投資者もいる。職場の問題、女性や少数民族の企業内での地位が低いという差別問題など、企業全体の社会的責任を幅広く見た上での投資が現在のSRIである。  現在の市場や組織を考えると、社会的責任が直接売上に関係してくると考えられる。グローバル化のなかで、人種問題、職場の問題、環境問題などを考えた上での企業活動でないと長期的な成長、売上には結びつかない。

2.SRIにおける投資先の選び方

SRIの方法としては、歴史的に見れば金融マネジャーが財務面からスクーリニングし、売上が出ると判断した後、SRI基準を入れるという“パッシィブな”方法が多い。ポートフォリオのなかから社会的に好ましくない企業を排除するという伝統的な方法である。何を重視するかはファンドやマネジャーによって異なるが、タバコやアルコール、女性や人種問題、兵器産業、核燃料まで入っている。

SSBはこのような方法ではなく、当初からSRI基準をスクーリニングに入れ、社会的責任を果たしている企業を探し出し積極的にポートフォリオに組み入れていくという“アクティブな”方法を採用している。女性や少数民族問題、環境問題に積極的な企業は市民からの評判がよく、これが実際の売上につながってくる。例えば、地域のコミュニティからの評価が高い企業は、新しいプラントを設置することに地域の反発が少ないので、プラント建設が容易になる。

社会的責任の中には職場の労働環境を取り上げる例もある。社員のニーズを理解していろいろな健康保険制度や休暇制度を導入したり、転勤が少ない(*)など、会社の待遇が良ければ、従業員の忠誠心が高まり、継続的に勤めるて効率が上がるということになり、直接的に売上につながるという調査結果が発表されている。このように、社会的責任投資は結局、良い投資になることがわかっている。

*米国は転勤により昇進する企業社会(内部労働市場)ではなく、職歴や資格取得を条件として転職すること(外部労働市場)が一般的な労働慣行となっている。

3.環境問題での重視ポイント

環境問題については、環境マネジメントシステム(EMS)が重要だと考えている。EMSをしっかり取り入れているかを、経営者レベル、社員レベルについて判断し、会社全体で環境への配慮がなされているかを評価する。EMSが行き届いていれば、様々な環境リスクに対応できるはずである。

また、あらゆる利害関係者とのコミュニケーションが重要である。(環境問題に限らず)これまで米国方式では株主一辺倒であったが、株主だけでなく、地域住民、政府、消費者、NGOなどさまざまな利害関係者のことを考えて行動するのがこれからの企業ではないかと考えている。

4.SRIをめぐる状況

アメリカにおけるSRIの資産総額は、1999年に約2兆ドルに上っている。この額はプロが管理するミューチュアル・ファンドの約8分の1にあたる14%を占めている。1997年は10%位であった。はっきりした統計はないが、一般的に言われていることは、投資者は女性が非常に多いということである。女性の社会的進出とともに女性の投資が伝統的な投資者とは違った形で増えている。なかでも少数民族の人々や価値観が変わってきている。若い人もSRIの投資者になっている。

カナダではこの5年間にSRIが200%増え、英国でも500%、5倍に伸びている。米国ではSRIの基準によるミューチュアル・ファンドの数は150 あるが、この10年間で3倍に増えた。ファンドマネジャーの運用するファンド(1000ドル程度から投資できる)だけでなく、個人の求めに応じてポートフォリオを組むオーダーメイドのファンドも多い(投資額5万ドル以上が条件)。最近ではSRIに関する問い合せやセミナーの受講者が増えており、企業はSRIにより自社がどう評価されるかを非常に気にしている。

5.投資先の選び方(追加)

SRIについては、投資先の選定基準をはっきりさせてオープンにしないと投資者が集まらない。例えば、兵器産業に関係しているという場合、売上の何%が兵器産業からか、社員何人が関係しているか、商品は何かなどの数字をはっきり出して評価基準を決める。環境問題については、投資家は漠然とした問題でなく、森林の消滅、大気汚染、生物多様性など具体的な問題に関心を示しており、ファンドもそれを反映させて投資先を選んでいる。SRIが充実してくると、情報の時代でもあり、情報システムを使って個人の価値観に合わせた細かいデータが簡単にできるから、オーダーメイドのファンドも増えてくると考えられる。

個別企業の組み入れに当たっては、社会的責任の側面と財務面とを総合的に判断する。社会的責任で優れていても財務面で将来性がない企業はクライアントへの責任から組み入れを避けることになる。企業調査については、財務については金融機関としての調査システムを持っているが、社会的責任については独自に常時情報を収集している。情報源としてはニュース、他団体の発表、CEPの報告書、政府・EPAのデータ、環境報告書、個人の以前勤務していた会社の情報などがある。それらの情報を元に、社会的責任において各業種ごとにベスト・パフォーマーを選ぶようにしている。SRIのパフォーマンスについては、一般のファンドに比べて同じかそれ以上という実績である。

★SRIの全体分野について一覧すると次の表のようになる。
表)主なモラル・ファンド22社のSRI分野と分野別会社数

アルコール 10 タバコ 19 ギャンブル 10
軍事・兵器 19 動物実験 製品・サービス 12
環境 16 人権 11 労働関係 12
雇用・平等 14 コミュニティへの投資 コミュニティとの関係

注:SSB社のファンドは、「タバコ」「軍事・兵器」「製品・サービス」「環境」「雇用・平等」の5分野を対象としている。

【報告者:緑川芳樹(グリーンコンシューマー研究会)】

提供資料

  1. リーフレット「Issues in Social Investing:Environmental Drivers and Shareholder Value」
  2. リーフレット「Issues in Social Investing:Workplace Drivers and Shareholder Value」
  3. リーフレット「Issues in Social Investing:The Role of "Best of Class" Supportive Screens in Social Investment」

感想

日本でも企業の社会的責任全般ではなく環境だけに特化したものではあるが、1999年からエコファンドが始められ人気を集めている。パフォーマンスも滑り出しは悪くはないようだが、米国と異なり組み入れ企業も全部は情報提供されないままムード先行で投資がされている(その後全企業名公表の動きが出ている)。投資者が自分の目で情報を確認して決めるという自立性が弱く、米国とは社会的基盤の相違を強く感じる。米国では消費者運動と同様に、投資についても長年の株主運動の課題があり歴史がある。例えば、1989年、多数の環境NGOと投資会社がCERES(環境に責任を持つ経済のための連合)を設立し、企業の守るべき環境原則、セリーズ原則(旧バルディーズ原則)を定め、株主総会で決議を求めている活動があり、国際的な展開もある。  日本のエコファンドもこのままでは、パフォーマンスが悪くなれば人気が離反して終わることになりかねない。自己の社会的価値観に立脚した「自己責任投資」が求められる。(緑川)

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