◆シェラトン・リッテンハウス・スクウェア・ホテル
・所在地:フィラデルフィア
・訪問日:2000年 2月28日(月) 15:00〜18:00
・面接者:Ms. Barbara Sibers(Sales Manager)
【会社概要】
↓ リッテンハウス公園から見た正面外観

アメリカの大手ホテルチェーンであるスターウッドホテル・アンド・リゾーツ社が環境保護に配意した都市型ホテルとして、1999年1月にフィラデルフェアのリッテンハウス公園に面した場所に「シェラトン・リッテンハウス・スクウェア・ホテル」(以下「シェラトンホテル」とする。)を開業した。客室数193室、従業員100人、2つのレストランと1つのバーを持つ中規模ホテルで、市内ではビジネスエリアにあり、平日はビジネスマン、週末は観光客が主なゲストである。以下、その概要を紹介する。
1.歴史的建築物をリニューアル
当建物は1927年に建設された歴史的な建物でフィラデルフィアで有名なアスレチッククラブであったが、その歴史的建築物の外観を保存したまま、1997年より内部の改装工事を着工し、1999年1月に環境に配慮したホテルとして開業した。
↓ 正面外壁
内部は部材のリユース・リサイクルを重点とし、外観・構造および間仕切壁等を出来る限りそのまま残してリニューアルしているため、客室の間取りがフロア等により相違していたり、配管等を通すために同一フロアに階段があったりする。
また、エレベータは新しいものを設置せず、ケージ内を改修して済ませている。
2.竹林のある大広間
↓ 1F 竹林のある大広間 (6Fまで吹抜)
「バンブー(竹)ルーム」と呼ばれる6階まで吹抜けのある大広間(床面積
2400ft2)には、高さ40フィート(約12m)の竹林がある。これは宿泊客の目を楽しませるばかりでなく、竹の吐き出す酸素量が他の植物より35%も多いため、空気を清浄化する役目も果たしているという。ここの空気は客室など館内に循環されている。
また、天井からの照明は竹の成長に良い光を採用しており、夏季には屋根のトップライトから自然光を取入れ、冬期にはトップライトの上に断熱材をかぶせ熱の発散を防いでいる。
床のカーペットには、素材にウールと木綿の自然素材を使い、大豆インクで染色するなど、有害な化学物質が極力放出されないように配慮している。
3.フロント、ロビー、廊下
フロントからロビーにかけての空間にも環境に配慮した建材が使用されており、フロントのカウンター天板には93%リサイクルのストーナイトと呼ばれる人造大理石を使用し、カウンター下のタイルは100%リサイクルのガラスモザイクを使用している。
ロビー床のタイルはフロントカウンターの天板と同じ93%リサイクルされたストーナイトタイルを使用している。


← 3F廊下(エレベーターホールと約70cmの段差)
フロント背面からロビーにかけての壁には、竹を加工した集成材パネルを採用している。竹は成長が早く持続可能な材料であると考えている。
各階廊下の壁には、植物繊維や紙を100%再生加工した壁紙を使用しており、壁面の照明は100%リサイクルしたガラスフードでデザインされている。床のカーペットは1階大広間と同じ環境配慮材料を使用している。カーペットは5〜6年毎に更新するが、その場合はリサイクルする予定である。いずれも化学物質を極力使わないようにしている。
3階のエレベーターホールと廊下の床は、客室階へ供給する配管を行うため2重床としたために約70cmの段差ができてしまっている。また、床の嵩上げにはリサイクルした鉄を使用している。
4.客室
客室では「オーガニック・スリープシステム」と呼ぶ一連の配慮を徹底している。まず、マットレスや寝具に漂白剤、染料等を一切使用しない天然有機栽培の綿と木綿を100%使用している。マットレスのクリーニングはオゾン層を破壊しない方法とするため、パルスマシーンでたたいて汚れをとっている。この方法だとマットレスが長持ちすることも分かった。マットレスのスプリングはリサイクルしたものを使用している。


カーペットは、大豆インクで染色した自然素材を使用し、家具類は有害薬品の気化を防ぐ処理をしてある。中でもベッド脇のナイトスタンドテーブルはユニークで、運搬用に使うパレットを再利用したもので、よく見るとキズがたくさん付いている。着色には化学製品でない自然のものを使用している。
↓ 客室のゴミ箱
化学物質、化学薬品を排除し、環境に配意した取組みを実施しているこのホテルでは、2泊以上宿泊する場合に、資源保護のためシーツやタオル等のリネン類を毎日交換するかの判断をゲストに尋ねるメッセージボードがベット及びバスルームに置いてある。
シャンプーや石鹸などのアメニティグッズは、個包装の使い捨てではあるが、中身は自然素材をベースにしたものである。
また、ゲストがごみの分別をしやすい様に、籐を編んで作った4つに区切られている特製のごみ箱を客室内に置いている。
このように、再生材を使い、有害な化学物質を排除するなど環境に配慮したホテルとしたため、メンテナンスコストを含めて約35%のコストアップとなってはいるが、利用するゲストからはとても喜ばれている。
【Q&A】
Q1: エコホテルの創設を考えたエコスマート社は、すでに解散していると聞いたが?
A1: エコスマート社は、環境に配意したホテル建設を考え、ベンチャー投資家を募り、環境配慮型素材の提供などの取りまとめをした会社である。この会社はホテル完成後の99年12月に解散した。ホテルのオーナーは100名からなる投資家で構成されており、オーナーは当初から変わっていない。
Q2: シェラトングループとして今後のエコホテル展開をどのように考えているか?
A2: スターウッドグループの一員としてシェラトンホテルがフランチャイズ運営をしており、セールス・サービス等は共通で、シェラトンホテルの一つのブランドとして考えている。まだ開業して間もないので、今のところ同様のエコホテルを積極的に展開していくことは考えていないが、様子を見ているところである。グループ内には様々な個性的なホテルがあり、このエコホテルもそのひとつと考えている。現在はシェラトンホテルグループの社員研修や会議で頻繁に利用しているほか、宣伝に使っている。
Q3: 環境マネジメントシステム(EMS)の導入・認証を考えているか?
A3: 開業して一年しかたっていいないため、今後の検討課題であると思う。環境に関する一般的な法律、条例は遵守をしている。
Q4: 顧客にエコホテルであることをどのように伝えているのか? 客からの評判は?
A4: ロビーや客室に「エコスマート」についてのパンフレットを置いてある。オーガニック、リサイクル、禁煙、リサイクル材使用等はとても好評であり、特にアレルギーの方々には喜ばれている。環境に良いホテルに泊りたい、という問い合わせもたくさんあり、予約も順調に入っている。また、ユニークなホテルとして、体験的に宿泊される方々もいる。
Q5: 経営的な収支状況は?
A5: 99年1月のオープンのため立ち上げてそれほど経っていないので明確なことは言えない。しかし、この1年でオープンしてから5年を経過したホテルと同じ位の売上があり、開業したてのホテルとしてはとても良い成績だと考えている。
Q6: 有機食材の利用や生ゴミのリサイクルの実態は?
A6: 有機栽培の食物は、まだ品質確保の点で問題があり導入していない。生ゴミの処理については市の条例で規制があるため市に処理を依頼しており、堆肥化等のリサイクルは行っていない。その他のゴミは、市条例により分別(ガラスビン・缶・プラスチック・紙)している。
Q7: スタッフは100名と聞いたが、同規模のホテルと比較して多い方か?
A7: 環境に配慮したインテリアなどのメンテナンスのため、稼動が若干多くかかるのでスタッフも若干多いと思う。
Q8: シーツやタオルの交換をしなくても良いと言われるゲスト割合はどのくらいか?
A8: 約80%のお客様が交換をしなくても良いと言われるが、グレードの高い部屋を利用されるお客様は、交換することを望まれることが多い。
Q9: 一度利用された方が、繰り返し利用する割合はどれくらいか?
A9: 約75%の方々が再度利用していただいており、フィラデルフィアでは高い方である。
Q10: 石鹸、シャンプーを詰替用ボトルで配備しないのか?
A10: 当初、導入の検討はしたが、スターウッドホテルグループのサービス規定があるため、詰替方式は見送った。(詰替方式は、衛生的でないという意識が強い。)
Q11: 上下水の他に中水という考え方があるが、中水の再利用はしていないのか?
A11: 市の衛生基準があるため、再利用は出来ない。
【資料1】 ゲスト向けパンフレット『アメリカにおける最初のエコスマート・ホテル』
【資料2】 ホテル支配人からゲストへのアナウンスペーパー
【資料3】 タオル交換についてのメッセージボード(バスルーム)
【資料4】 ベッドシーツの交換についてのメッセージボード
【資料5】 エコスマート社からのアナウンスペーパー その2
【感想】
当ホテルは環境に配慮したホテルとしてアメリカで注目を集めているとの事であり、そ のセールスポイントは竹林のあるバンブールームである。しかし竹の本数は約15本であり6階までの吹抜大空間の空気を浄化するには少な過ぎると感じられる。この竹は他の植物より35%多く(?)酸素を放出するとのことであり、これを信じこの清浄な空気を回収し各客室にダクトで送風している事は、宣伝としては非常に効果的で上手いものだと思います。
その他、以前の間仕切壁をそのままにしているため客室の平面にバラエティーがあり、廊下と客室間に70〜100cmの高低差があるなど、日本の設計であれば経済性・機能性を追求しできるだけ同一パターンとなるようリニューアルするのに対し、アメリカ人のおおらかさと細かい事に拘らないものだと感心させられました。 (吉川)
環境に配慮したエコホテルとしてアメリカで注目されているホテルですが、特に事前のアナウンスがなければ普通のホテルと思われてしまうのではないかと思われました。
しかし、細部についての説明を受けることにより、環境にやさしい素材、リサイクル、リユースと環境に配慮していることが伝わってきましたが、ホテルの目玉とされているバンブールームにある竹林については、ホテル側で説明するような効果があるのかが若干疑問として残りました。ただ、説明通りの効果があるのであれば驚くべきことであると思います。
この様なエコホテルが今後展開されるかについては未知数であり、アメリカにおける環境問題への取組み方により展開が左右されるのではないかと思います。 (下条)
【視察先】※各下線部をクリックすると詳細がご覧いただけます。
◆CEP(経済優先度評議会) ◆ソロモン・スミス・バーニィ(SSB)
◆シェラトン・リッテンハウス・スクウェア・ホテル ◆ケラー&ヘックマン法律事務所(Keller
and Heckman LLP)
◆環境保護庁(EPA) ◆サンタモニカ市 ◆セイフ・シュレッド社 ◆インターフェイス社
◆ウォルマート社
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