《会長声明》国際司法裁判所(ICJ)勧告的意見を歓迎します -持続可能な未来への法的・倫理的基盤の確立-
2025年7月23日、オランダ・ハーグにおかれた国際司法裁判所(ICJ)は、2023年3月の国連総会の要請に応じ、気候変動に関する国の義務についての勧告的意見を発表しました。それを受けて、梅田靖GPN会長は、国際司法裁判所(ICJ)勧告的意見を歓迎する会長声明をまとめましたので、お知らせします。
>> 《会長声明》国際司法裁判所(ICJ)勧告的意見を歓迎します -持続可能な未来への法的・倫理的基盤の確立-
以下、全文。
国際司法裁判所(ICJ)が2025年7月23日に発表した、気候変動に関する歴史的な勧告的意見を心より歓迎します。
この勧告的意見は、国際法上、すべての国は気候変動対策をとる義務があり、その義務を怠った国には法的責任が生じると、国際司法裁判所(ICJ)が見解を示したものです。
今回の勧告的意見は、気候変動問題を単なる環境問題の一つとしてだけでなく、法的義務として捉え直す転換点を示しました。また、各国には「清潔で健康かつ持続可能な環境を享受する」人権を守るため、科学的根拠に基づき、かつ相当な注意義務(デューデリジェンス)を尽くした行動を取る責任があることが明確にされた点で、重要な見解と言えます。
さらにICJは、民間企業による温室効果ガス排出を制限するために、国は必要な規制措置や立法措置を講ずる責任も負うと明確に述べており、それを怠った場合には、国の違法行為として法的責任が問われる可能性があることも示されました。
GPNは、グリーン購入の普及拡大が、「環境配慮型製品・サービス」の開発を促し、エネルギーや資源の消費を低減すると同時に、廃棄物の発生抑制や、環境意識の向上、他の環境への取り組みへの波及を促進すると考え、企業、行政および消費者を含むあらゆるステークホルダーへ普及啓発、情報発信を行ってまいりました。
私は、パリ協定の目標に加え、さらには2050年実質カーボンニュートラルを着実に達成するためには、脱炭素製品・サービス、とりわけ、カーボンニュートラル製品・サービスの普及は、国及び地方自治体・企業・消費者・業界団体・学識者が共に果たすべき、具体的なグリーン購入の選択肢として、非常に重要であると捉えており、以下のような視点での取り組みの強化が必要と考えます。
脱炭素製品・サービスの普及に向けたポイント
●グリーン購入が、単なる環境行動ではなく「法的・倫理的責任に基づく社会的行動」であることの普及促進。
●カーボンニュートラル製品・サービスを選ぶことが、法的義務を伴う気候変動対策に資する選択であるという認識の向上。
●身近に手に取れるカーボンニュートラル製品・サービスへの理解の向上と需要の増加。
●製品・サービスがカーボンニュートラルであることを、サプライチェーンにおける新たなデューデリジェンスとしての位置付け。
●国・地方自治体への政策提言:グリーン購入によるカーボンニュートラル促進を促す優遇制度や認証スキーム等の導入。
今回のICJ勧告的意見は、法制度や社会の仕組みを動かす起点となるものであり、これを契機に、カーボンニュートラル製品・サービスの普及を通じて、国及び地方自治体・企業・消費者・業界団体・学識者が連携して気候変動問題への責任を果たす姿を具現化してまいります。
2025年10月28日
グリーン購入ネットワーク(GPN)会長
梅田 靖
参考)ICJによる勧告的意見 本文暫定訳 ※2025年9月30日更新(気候ネットワーク)